BYDのEV、ATTO 1は、5つ星の安全評価とタッチスクリーンを備え、価格は約3万ニュージーランドドルだ。低価格の新型EVが増えれば、消費者の選択肢が広がるだけでなく、ニュージーランドで広く利用されている中古ガソリン車の価格や、それを中心に成り立つ事業にも影響を及ぼす可能性がある。ただし、実際の影響の規模はまだ確認されていない。
背景と経緯
ニュージーランドでは、中古輸入車が自動車市場で大きな割合を占めている。記事が引用する資料によると、中古輸入車は2023年に既存の軽量車両の42%を占め、2025年の中古乗用車輸入のほぼ97%は日本からのものだった。このため、新車価格の変化は新車市場だけにとどまらず、中古車の相対的な魅力や価格にも波及しうる。
EVの価格が市場の関心を集めたのは、今回が初めてではない。記事によると、テスラは2021年、値下げと当時のクリーンカー割引制度(청정차 할인 제도)の影響により、エントリーモデルのモデル3の価格を6万ニュージーランドドル未満に引き下げた。2023年には、割引適用後の価格が一時、5万5000ドル近くになったという。ATTO 1の約3万ドルという価格が注目されるのは、新型EVと中古ガソリン車がより直接的に比較されうる価格帯に入ったためだ。
新車市場と中古車市場は、互いに切り離されているわけではない。用途の似た新型EVを少し予算に上乗せして買えるなら、購入者は中古ガソリン車の価格がそれに見合うか、改めて検討する可能性がある。いわゆる「価格のはしご」(新車価格が中古車価格に連鎖的に影響する構造)が縮まれば、新車と直接競合する車だけでなく、さらに古い車の価値も押し下げられる可能性がある。
このニュースが意味すること
消費者にとって、低価格のEVは車選びの選択肢を増やす。一方、中古車を購入・売却しようとする人にとっては、新型EVの価格が中古ガソリン車の魅力や取引価格を左右する要因になりうる。ただし、ATTO 1がニュージーランドでいつ販売されるのか、実際の購入条件はどうなるのか、価格変動の規模はどれほどかは、与えられた情報だけでは確認できない。
例えば、用途の似た新型EVと中古ガソリン車の価格差が縮まれば、購入者は初期費用だけでなく、車の維持に必要な費用や用途もあわせて比較できる。その結果、中古車価格が下がる可能性はあるが、これは可能性を説明するための仮定であり、実際の市場ですでに確認された結果ではない。
影響は車両価格だけにとどまらない可能性がある。ニュージーランドの自動車部門は、約1万5000の事業所で6万8000人以上を雇用し、国内総生産に約80億ニュージーランドドルを寄与している。このうち、自動車の修理・整備部門で働く人は約2万3400人だ。車両の構成が変われば、必要となる部品や整備技術も変わりうるため、移行を消費者の購入選択だけで説明することは難しい。
EVにも、タイヤやサスペンションの交換、衝突修理、電子機器の整備は必要だ。しかし、オイル交換、排気系統、点火プラグ、各種のエンジン・変速機の修理は必要としない。したがって、整備の仕事がすべてなくなるとは言えないが、整備事業者や部品供給業者が提供する作業の種類は変わる可能性がある。中古車の価値が下がり、古い車の修理費を負担できなくなれば、一部車両の早期廃車が進み、部品・燃料・整備の需要にも影響する可能性がある。
確認できていることと、まだ分からないこと
確認できていること
- BYDのATTO 1は5つ星の安全評価とタッチスクリーンを備え、価格は約3万ニュージーランドドルと紹介されている。
- 中古輸入車は2023年にニュージーランドの既存の軽量車両の42%を占め、2025年の中古乗用車輸入のほぼ97%は日本からのものだった。
- MITOの2025年の報告書は、自動車部門について、約1万5000の事業所、6万8000人以上の雇用、国内総生産への約80億ニュージーランドドルの寄与を集計している。
- ニュージーランド統計局(뉴질랜드 통계청)の資料を引用した記事によると、中国は2026年6月までの1年間に、ニュージーランドが輸入した完全電気自動車の73%を供給した。
まだ分からないこと
- ATTO 1がニュージーランドでいつから、どのような条件で実際に購入できるようになるのか。
- 低価格の新型EVが中古車価格や廃車台数をどの程度変えるのか。
- 整備・部品・燃料関連の雇用が減ったり、業務が変わったりする場合、転換に向けた訓練や支援がどのように整備されるのか。
読者が確認すべきこと
- 車の購入を検討するなら、ATTO 1のニュージーランドでの販売時期と実際の購入条件を確認する必要がある。現時点で示されている約3万ドルという価格だけでは、販売開始時期や条件までは分からない。
- 中古車を売買する際は、新型EVの価格だけでなく、比較対象となる車の価格や修理の必要性もあわせて確認できる。新型EVの価格変動が中古車の価値に及ぼす影響は、まだ定量的に確認されていない。
- 自動車業界で働く人や事業者は、EVの登録台数だけでなく、中古車の価値、廃車、修理事業者や自動車部門の雇用の変化にも目を配る必要がある。記事は、電気・電子・ソフトウェア技術に関する訓練の必要性を指摘しているが、具体的な移行支援策は示していない。
筆者は、こうした変化がニュージーランドの自動車産業の差し迫った崩壊を意味するわけではないと強調する。車両の入れ替わりは緩やかで、ガソリン車も今後数十年間、道路を走り続ける可能性がある。ただし、低価格のEVが普及するほど、車の売買の仕方だけでなく、修理や部品供給の仕事の内容も変わりうる。だからこそ、EVへの移行による経済的影響を考えるには、登録台数だけでなく、中古車の価値や廃車、現地の事業所や雇用にも目を向ける必要がある。




















