為替の変化で、利益予想に下押し圧力

サムスン電子とSKハイニックスの第3四半期決算を前に、両社の業績見通しに変化が出ています。米半導体大手のマイクロンが過去最高の四半期・年間業績を発表し、AI(人工知能)向け半導体への関心が高まる一方、韓国の証券会社はサムスン電子などの営業利益予想を引き下げました。

大きな要因は、ここ数カ月の急速なウォン高です。韓国企業が海外で得たドルをウォンに換算するとき、ウォン高が進んでいれば、同じ額のドルを稼いでも韓国通貨での売上高や利益は小さくなります。

業績予想の下方修正では、為替の影響が主要な要因になっています。

サムスン電子の予想は平均8.4%減

金融情報会社の集計によると、直近1週間にサムスン電子の業績見通しを公表した証券会社7社は、いずれも第3四半期の営業利益予想を引き下げました。営業利益とは、本業でどれだけ利益を得たかを示す数字です。

7社の予想を平均すると、修正前は11兆4,200億ウォンでしたが、修正後は10兆4,600億ウォンとなりました。平均で約8.4%の引き下げです。ある証券会社は、予想を11兆6,500億ウォンから10兆1,700億ウォンへ、約12.8%下げています。

サムスン電子は翌週に決算を発表する予定です。SKハイニックスについても、10月後半に予定される決算を前に、一部の証券会社が利益予想を引き下げました。

1ドル=1,550ウォンからの急変

記事によると、ウォン・ドル相場は一時、1ドル=1,550ウォンまで上昇した後、約2カ月で200ウォン以上下落しました。為替相場の数字が下がることは、この場合、ドルに対してウォンの価値が上がったことを意味します。

半導体のように海外販売の比重が大きい企業では、為替の変化が決算に影響します。たとえば、輸出先から100ドルを受け取る企業は、1ドル=1,500ウォンなら15万ウォン相当を得ますが、1ドル=1,300ウォンなら13万ウォン相当です。販売数量やドル建ての価格が変わらなくても、ウォン換算の収入は減ります。

為替以外のコストも重荷に

電子製品では、部品価格の上昇も利益を圧迫する可能性があります。半導体以外の事業についても、原材料や部品にかかる費用が増えたり、これまでのコストが決算に反映されたりするとの見方が出ています。

さらに、AIの安全性をめぐる懸念から、企業がAI投資のペースを落とすのではないかという見方もあります。データセンターなどの設備投資が鈍れば、AI向け半導体の需要予測にも影響するため、投資家は為替だけでなく、顧客企業の投資計画にも注目しています。


利益予想が下がっても、目標株価はおおむね維持

業績予想の引き下げにもかかわらず、証券会社の多くはサムスン電子とSKハイニックスの目標株価を維持し、投資判断も「買い」としました。SKハイニックスの目標株価を引き下げた証券会社は1社にとどり、ほかは維持または引き上げたとされています。

記事では、各社の目標株価の具体的な金額は示されていません。そのため、ここで確認できるのは、利益予想が下がる一方で、証券会社の多くが中長期的な成長期待を保っているという点です。

その根拠の一つが、為替の影響は一時的なものにとどまる可能性があるとの見方です。また、AIの進化に伴ってメモリー半導体の用途が広がり、需給が引き締まるとの予想も、目標株価を支える材料になっています。

AIの使い方が広がり、メモリー需要も変化

AIの利用は、システムに大量のデータを学習させる段階だけでなく、利用者の質問に答えたり、複数の作業を自動で進めたりする段階へと広がっています。こうした処理では、情報を一時的に保存し、必要なときにすばやく読み出すメモリーの役割が重要です。

DRAM(処理中のデータを一時的に保存する半導体メモリー)は、コンピューターやサーバーが情報を扱う際に使われます。AI向けの計算設備が増えれば、演算装置だけでなく、それと連携するメモリーも必要になります。AIの使い道が増えるほど、メモリーを必要とする企業や製品の範囲が広がる可能性があります。

AIの中心が学習から推論や自律的な作業へ移っても、AI設備におけるメモリーの重要性は変わらず、需要先はむしろ広がるとの見方が出ています。

証券会社の分析では、メモリー各社は2027年の供給が2026年よりさらに厳しくなると見込んでいます。マイクロンも決算説明会で、メモリーの供給不足がいつ解消するか、現時点では見通しにくいとの認識を示しました。

株主還元策も株価の支えになるか

投資家が注目するもう一つの材料は、企業が株主に利益を還元する方針です。株主還元とは、配当を増やしたり、自社株を買い戻したりして、企業の利益を株主に返す取り組みです。会社が安定した還元策を示せば、業績に不安がある局面でも株価の下支えになる場合があります。

証券会社の分析担当者からは、現在の株価には半導体市場の好調さが十分に織り込まれていないとの見方や、決算発表で具体化する株主還元策に注目すべきだとの意見が出ています。ただし、株主還元の内容や金額が確定しているわけではなく、実際の発表が市場の期待に届くかどうかが焦点です。

  • 短期的な下押し要因:ウォン高、部品価格の上昇、費用の増加
  • 中長期的な期待材料:AI設備の拡大、メモリー需要の増加、供給不足の長期化
  • 株価の確認材料:第3四半期決算、企業の需要見通し、株主還元策

投資家が見るべきポイント

今後は、為替がさらに動くかどうかに加えて、企業が決算でどのような販売・利益見通しを示すかが重要です。特に、AI向けメモリーの需要が実際の受注や価格上昇につながっているか、また供給を増やす計画が需要に追いつくかが注目されます。

目標株価が維持されていても、将来の株価上昇が約束されるわけではありません。AI投資が想定より減速したり、部品や生産のコストがさらに上がったりすれば、業績や市場の評価が変わる可能性があります。

予想の下方修正と成長期待は同時に存在

今回の動きは、短期の為替変動が利益予想を押し下げる一方で、AI向けメモリーの成長期待が中長期の評価を支えていることを示しています。投資家にとっては、目標株価だけを見るのではなく、為替の影響が一時的なのか、メモリー需要の強さが実際の業績に結びつくのかを、決算内容とあわせて見極める必要があります。