41歳のホンテン、再びアジアの表彰台へ

韓国のブレイキン選手、キム・ホンヨル(ダンサー名・ホンテン)が、2026年愛知・名古屋アジア大会の男子決勝で銀メダルを獲得した。10月3日、愛知県常滑市で行われた決勝では、日本のシゲキックス(中井悠真)に0対3で敗れたが、前回大会の金メダルに続き、2大会連続でメダルを手にした。

記事では41歳と紹介されるホンテンは、決勝で18歳年下の24歳の相手と対戦した。連覇は逃したものの、年齢差を感じさせない力強い動きで会場を沸かせ、観客から大きな歓声を浴びた。

「金色の運を呼び込もうと、髪も金髪に染めてきたのに」と、ホンテンは銀メダルへの悔しさをにじませた。

勝つことだけでなく、踊る喜びを大切に

ホンテンが今大会で掲げた一番の目標は、結果だけを追い求めず、大会そのものを楽しむことだった。前回の杭州大会は、パリ五輪への出場枠がかかった時期でもあり、勝つことに集中するあまり、舞台を楽しむ余裕がなかったという。

今回は経験を重ねた選手として、音楽のリズムに身を委ねながら踊ることを意識した。本人は大会を通じて「これまでで一番よく笑っていたと思う」と振り返り、観客の声援を受けながらパフォーマンスを楽しんだ様子を見せた。

ブレイキンは、音楽に合わせて立ったまま踊る動きや、床に手をついて回転する動きなどを組み合わせて表現するダンス競技だ。腕や体幹で体を支えながら素早く回る技もあり、見た目の華やかさだけでなく、強い筋力、持久力、リズム感が求められる。

年齢に合わせて体を整え、新しい動きも加える

ホンテンは大会に向け、韓国の国家代表選手が練習する施設で、午前の筋力トレーニング、午後のダンス練習、夜の個人練習を重ねた。体力を高めるだけでなく、演技の細部まで磨き、これまでにない動きも取り入れたという。

特に力を入れたのは「トップロック」と呼ばれる、床に入る前に立った状態で見せるステップだ。ブレイキンでは、踊り始めに立ってリズムや個性を示し、その後、床を使った動きへとつなげることがある。ホンテンは、最初の一歩から観客を引き込めるよう、動きを丁寧に整えた。

  • 筋力トレーニングで、演技を支える体力を強化
  • ダンス練習で、動きの精度や見せ方を磨く
  • 新しい技やステップを取り入れ、表現の幅を広げる

年齢を重ねるなかで、若い選手の動きや新しい流行から学ぶことも大切にしている。自分のスタイルだけに固執せず、若い世代の踊り方を取り入れることが、踊り続ける楽しさにつながっていると話す。

「世代が変わり、若い選手を中心に流行も変わっていく。今の動きを学ぶことが、踊り続ける力になっている」

友人とのダンスから、世界の舞台へ

ホンテンがブレイキンを始めたのは中学生の頃だ。学校の友人たちと一緒に踊る、楽しい遊びのような時間が出発点だった。ダンスを通して新しい人と出会い、自分自身が成長していく喜びを知るうちに、ブレイキンは生活の一部になっていった。

2002年には、韓国選手として初めて世界大会で優勝し、国内外で知られる存在となった。世界的に知名度の高い大会「レッドブル・ビーシー・ワン」の決勝でも、2006年、2013年、2023年に優勝している。最初の世界大会で感じた感動と達成感は、今も忘れられないという。

アジア大会への出場も、長い選手生活のなかで忘れられない経験の一つだ。2022年杭州大会は実際には2023年に開催され、ブレイキンが正式競技として行われた。ホンテンはそこで金メダルを獲得し、今回は銀メダルを加えて、アジア大会での実績をさらに積み重ねた。

連覇を逃しても、挑戦の価値は変わらない

今回の銀メダルは、単に順位を示すものではない。長年にわたり第一線で踊り続け、若い選手と競い合いながら、新しい表現を追い求めてきた歩みも映し出している。ブレイキンのように身体への負担が大きい競技で、年齢を重ねてなお世界の舞台に立つことは、日々の準備と向上心の積み重ねを必要とする。

ホンテンは、年齢や状況を理由に「自分には無理だ」「今さら始めても遅い」と考える人たちに、自分の姿が別の可能性を示せたらと願っている。新しいことに挑むのに、決まった年齢や完璧な条件が必要とは限らない。仕事や生活のなかで何かを始めるか迷っている人にとっても、その考え方は身近な励ましになり得る。

「遅いと思ったときでも、新しいスタートは切れる。自分の挑戦が、誰かの小さな勇気や希望になればうれしい」

40代の人たちにも、苦しい時期だけではなく、きっと良い日もあると語りかけた。本人も、人生で簡単ではない時期を経験してきたが、踊ることで再び笑顔を取り戻せたという。


後輩へ経験を伝え、次の大会へ

ホンテンは、自身のメダルだけでなく、韓国ブレイキンのこれからについても考えている。韓国の選手たちが再び強さを発揮できるよう、自分が積み上げてきた技術や経験を後輩に伝える用意があると話した。

目指すのは、勝利の数だけで評価される選手ではない。ブレイキンの文化や価値を守り、踊ることを楽しみながら、後輩に良い影響を残した選手として記憶されることだ。競技としての強さと、音楽や仲間とともに踊る文化の両方を次の世代につなぐ考えがうかがえる。

大会を終えたホンテンは、すでに次の目標に向けて準備を始めている。銀メダルで挑戦を終えるのではなく、次の舞台でも踊り続ける。その姿は、挑戦を始めるのに遅すぎることはないという本人の言葉を、力強く伝えている。