映画をめぐる対立、俳優の自宅前へ
韓国の右翼団体「新自由連帯」が、映画『暗殺者たち』に出演した俳優ユ・ヘジンさんの自宅前で集会を開くと予告しました。映画をめぐる政治的な批判が、作品の制作陣や出演者への攻撃に広がり、さらに個人の住居周辺での抗議にまで発展しています。
同団体の代表、キム・サンジン氏は10月1日、交流サービス「スレッズ」に、集会の届け出を済ませたと投稿しました。投稿には、屋外集会の届け出を受け付けたことを示す書類の写真も添えられていました。
公開された届け出の内容では、集会は10月3日から30日までの予定で、参加人数は20人。放送車両2台と、折りたたみ式の簡易ステージなどを用意するとされています。
住居とみられる建物の写真も公開
キム氏は届け出書類とあわせて、ユさんの自宅とみられる建物の外観写真も公開しました。さらに、集会を実施すれば所属事務所がユさんの住まいを移すだろうとの見方を示し、「家出して逃げたユ・ヘジン」を証明する、といった趣旨の発言をしています。
ただし、集会の具体的な実施状況や、写真に写った建物が実際にユさんの住居であるかどうかは、投稿内容だけでは確認できません。住居の写真を公開して抗議を呼びかける行為は、本人や周辺住民のプライバシー、安全への影響が懸念される点でも注目されています。
ここでいう「屋外集会の届け出」とは、屋外で集会を開く予定を警察などに事前に知らせる手続きです。届け出があったことだけで、集会がすでに実施された、あるいはすべての条件が確定したと判断できるわけではありません。
映画の描写をめぐる政治的な批判
『暗殺者たち』は、韓国の朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の妻、陸英修(ユク・ヨンス)氏が銃撃された事件を扱った映画です。9月23日の公開後、一部の政治家らは、作品が朴元大統領の事件への関与を示唆するように描いていると批判し、上映中止や法的責任に言及してきました。
映画をめぐる議論では、歴史上の事件をどのように描くべきか、またフィクションと事実の境界をどう示すべきかが争点になっています。映画の表現を批判することと、出演者の容姿や自宅を標的にすることは別の問題であり、批判が個人への攻撃に変わっていないかが問われています。
作品の政治的な解釈をめぐる議論が、出演者の外見や生活の場にまで及んでいることが、今回の集会予告の大きな懸念点です。
ユ・ヘジンさんへの外見をめぐる発言も
映画への批判は、制作陣や出演者のほか、作品を肯定的に評価した著名人にも向けられています。与党「国民の力」のチュ・ジヌ議員は、ユさんの外見を「北朝鮮風」と表現し、容姿を攻撃する発言だとの批判を受けました。
チュ議員はその後、「北朝鮮を擁護したという意味で使った」と説明し、表現の自由だと主張しました。しかし、政治的な意見や作品への評価を理由に、本人の外見を持ち出すことには、議論の内容を離れて人格を傷つけるものだとの批判があります。
- 作品への批評:映画の歴史認識や演出、事実との関係を論じること。
- 個人への攻撃:出演者の外見や私生活を取り上げ、本人を標的にすること。
- 自宅周辺での抗議:本人だけでなく、家族や近隣住民にも影響を及ぼす可能性があること。
団体代表が過去に主導した集会
キム氏は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が暮らす慶尚南道・梁山(ヤンサン)市の平山村での集会を主導した人物です。また、2020年にはソウルの旧日本大使館前で、少女像の撤去を求める主張を行いました。
2022年には、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領夫妻から贈られた秋夕(チュソク)の贈り物を公開して話題になりました。同年の梨泰院(イテウォン)雑踏事故の後には、犠牲者を追悼する施設の近くで長期間の集会を行い、遺族から抗議を受けたとされています。
また、12月3日の非常戒厳をめぐる事態の後には、尹前大統領を再び支持する「ユン・アゲイン」集会を開催してきました。こうした過去の活動は、今回の集会予告を、映画だけをめぐる一時的な抗議ではなく、政治的な街頭活動の一環として見る背景になっています。
表現の自由とプライバシーの境界
集会やデモは、政治的な意見を公に示す手段です。一方で、特定の人物の自宅を直接の対象にする場合、本人の安全や私生活、近隣住民の平穏に影響するおそれがあります。公共の場所で意見を表明する権利と、個人の生活空間を守る必要との間で、どのような線引きをするかが重要になります。
今後は、届け出られた日程どおりに集会が行われるのか、警察や関係機関が周辺の安全をどう確保するのかが焦点です。また、映画をめぐる批判が出演者や関係者への個人攻撃に広がるなか、政治的な反対意見を示す方法と、本人の尊厳やプライバシーを守る措置の双方が問われています。



















