銀メダルをつかんだホンテン、会場を沸かせる

「5、4、3、2、1!」。観客と進行役の声が重なり、2人の選手の得点が大型スクリーンに同時に映し出される。ブレイキンの勝負は、音楽に合わせて交互に踊り、技や表現力を競い合う一対一の対決だ。得点が発表される瞬間まで緊張感が続き、競技でありながら会場全体を巻き込む祝祭のような熱気が広がる。

その舞台で韓国のキム・ホンヨル、ダンサーネーム「ホンテン」が銀メダルを獲得した。2026年10月3日、日本の愛知県常滑市にある愛知スカイエキスポで行われたアイチ・ナゴヤ・アジア大会の男子決勝で、日本のナカライ・シゲユキ(シゲキックス)に0対3で敗れ、金メダルには届かなかった。

前回大会の金メダルに続く、アジア大会2大会連続のメダル獲得。結果だけでなく、40代で若い選手たちと競い続ける姿も注目を集めた。

前回は金、今回は銀。それでも記録は途切れない

ホンテンは、ブレイキンがアジア大会の正式種目として初めて実施された前回大会で金メダルを獲得している。前回大会は2022年に開催予定だったが、実際の開催は2023年となった。今回は連覇を逃したものの、再び表彰台に立ち、2大会連続でメダルを手にした。

決勝後、ホンテンは「あと10年若くなくても、5年だけ若かったら勝負できたかもしれない」と笑いながら、悔しさをにじませた。年齢を重ねるほど、全身を使う激しい踊りを続ける負担は大きくなる。それでも、最後まで自分の踊りを見せ、決勝の舞台まで勝ち上がった。

勝つことだけでなく、踊る喜びを大切に

ホンテンは、前回大会と今回の大会では、試合への向き合い方が違ったと振り返る。前回はオリンピック出場枠がかかった大会だったため、勝つことに集中し、競技を楽しむ余裕があまりなかったという。今回は経験を重ねたことで、結果だけにとらわれず、音楽や観客の反応を感じながら踊ることを意識した。

「大会を通じて、自分が一番よく笑っていたのは確かだと思う。すべてを忘れて楽しむという最初の目標は、十分に達成できた」。ホンテンの踊りには観客から大きな歓声が上がり、会場の盛り上がりを引き出した。勝敗を競う場でありながら、踊りを通して観客と喜びを共有することも、彼にとって大切な成果だった。

ブレイキンとは

ブレイキンは、音楽に合わせて床上で回転したり、体を止めたり、リズムに乗って動いたりしながら、技術と個性を競うダンス競技だ。たとえば、頭や手で体を支えて回る動きや、流れるような足さばきなどを組み合わせ、自分ならではの演技をつくる。選手は技の難しさだけでなく、音楽との一体感や表現の工夫も見せる。


体力づくりと練習を重ねて迎えた大会

大会に向け、ホンテンは韓国の鎮川にある選手村で集中的に準備を進めた。午前は筋力トレーニング、午後はダンスの練習、夜には個人練習を重ね、2度目のアジア大会で「もっと見せたい」という思いを形にしようとした。

ブレイキンでは、体をひねる、回転する、床に手をついて体を支えるといった動きが連続する。踊りの見栄えを保ちながら、けがを避け、試合の最後まで動き続けるには、技術だけでなく体力の管理も欠かせない。1984年生まれのホンテンにとって、若い頃と同じように踊るのではなく、体の状態を考えながら準備することも大きな課題だった。

  • 午前は筋力を鍛えるトレーニング
  • 午後はダンスの練習
  • 夜は個人練習を行い、動きや見せ方を調整

こうした積み重ねの先にあった決勝の舞台で、ホンテンは経験に裏打ちされた踊りを披露した。得点では敗れたが、観客の歓声を引き出し、競技者としての存在感を示した。


友人とのダンスから、世界の舞台へ

ホンテンがブレイキンを始めたのは、中学2年生の頃だった。最初は友人たちと一緒に踊り、楽しむための活動だったという。しかし、踊りを通じて新しい仲間と出会い、自分自身が成長していくことを感じるうちに、ブレイキンは暮らしの一部になっていった。

2002年には、韓国選手として初めて世界大会で優勝し、国内外で名前を知られるようになった。世界的に知られるブレイキン大会「レッドブル・ビーシー・ワン」の決勝大会でも、2006年、2013年、2023年の3度、頂点に立っている。初めて世界大会で優勝したときの感動は今も忘れられず、アジア大会への出場も競技人生の中で特別な記憶になっていると語った。

世代の変化を学びに変える

長く第一線で踊り続けるため、ホンテンは自分のスタイルに固執しないよう心がけている。若い選手たちが踊る方法を学ぶことが、自分の原動力になっているという。競技の流行や表現の仕方は世代とともに変わるため、新しい動きを知り、取り入れることを楽しんでいる。

「自分のやり方だけにこだわりたくなかった。今の流行を受け入れて学び続けることが、ここまで続けてこられた理由の一つだと思う」

経験を重ねた選手が若い世代から学ぶことは、過去の実績に頼らず競技を更新し続けることでもある。ホンテンは、積み上げてきた技術を大切にしながら、新しい世代の感覚も吸収している。


年齢を理由にあきらめないために

40代で、体を大きく動かすダンス競技に挑み続けるホンテンの姿は、「今から始めても遅い」「自分には無理だ」と感じている人にも、別の可能性を示している。本人は、自分の挑戦が誰かにとって小さな勇気や希望になればうれしいと話す。新しいことを始めるのに、決まった年齢の線引きはないという考えだ。

人生には難しい時期もあったが、踊ることで再び笑顔を取り戻せたことがあるという。今回の大会では、金メダルを願って髪を金色に染めて臨んだものの、優勝には届かなかった。それでも、踊りと舞台を楽しみ、最後には笑顔を見せた。

ホンテンは、ブレイキンを見た人が、ほんの少しでも笑顔になり、元気を受け取ってくれたらと願っている。銀メダルは、金メダルを逃したという結果だけではない。長い競技人生の中で新しい世代と向き合い、なお挑戦を続ける姿を示す一つの節目となった。


次の挑戦へ

アジア大会で2大会連続のメダルを獲得したホンテンは、前回の優勝者であると同時に、今も変化を学び続ける現役選手だ。決勝ではシゲキックスに敗れたが、観客を引きつける踊りと、結果にかかわらず舞台を楽しむ姿勢を見せた。

年齢や過去の実績だけで、自分の可能性を決めない。若い選手の表現から学び、身体と向き合いながら、新しい踊りを探し続ける。ホンテンの挑戦は、銀メダルを手にしたこの日で終わるのではなく、次の舞台へと続いていく。