百歳以上が初めて10万人を突破

日本の百歳以上の人口が、統計開始以来初めて10万人を超えました。厚生労働省が「敬老の日」にあわせて公表した統計によると、2026年の百歳以上の人は10万7677人です。調査が始まった1963年には153人だったため、63年間で700倍以上に増えた計算になります。

百歳以上の人のうち、女性はおよそ88%を占めます。長寿を支える医療や生活環境が整ってきた一方、介護を必要とする人が増えることは、家族や介護現場だけでなく、社会全体の費用にも影響します。

長寿の広がりは喜ばしい変化であると同時に、必要な介護を誰が、どのように支えるのかという課題を大きくしています。

介護保険の費用は制度開始時の約3倍に

日本の介護保険は、介護が必要になった人を社会全体で支えるため、2000年に始まりました。利用者は介護サービスの費用の一部を負担し、残りは保険料や公費などで賄われます。訪問介護や施設での介護など、日々の暮らしを支えるサービスが制度の対象です。

介護保険から支払われる給付費は、制度開始当初と比べて増え続けています。2024年度には13兆2973億円となり、2000年の約3倍に達しました。これは、介護サービスを利用する人が増えたことや、高齢者人口の拡大などが背景にあります。

介護保険の費用が増えると、保険料や公費を通じて負担する人々にも影響が及びます。特に現役世代の保険料負担が重くなれば、働く人の家計や企業の負担にもつながるため、制度を長く維持できるかが政策上の焦点になっています。

利用者の自己負担は原則1割

現在、介護サービスを利用した際の本人負担は、原則として費用の1割です。一定以上の所得がある人には、所得に応じて2割または3割が適用されます。今回の議論では、2割を負担する人の範囲を広げるかどうかが主な論点です。

たとえば、介護サービスにかかる費用が1万円なら、1割負担の人は1000円、2割負担の人は2000円を支払います。負担割合の引き上げは、利用者の支払いを増やす一方、保険制度から出る給付を抑える効果が見込まれます。


「負担能力に応じて」と「利用を控えさせない」の間で

厚生労働省の審議会では、2割負担の対象拡大をめぐり、積極的に見直すべきだという意見と、慎重に進めるべきだという意見が対立しています。積極論は、現役世代の保険料負担がすでに重くなっているとして、所得や支払い能力に応じて負担を求める仕組みを強めるべきだと主張します。

この考え方は、医療や社会保障の費用を、より負担できる人に多く担ってもらうというものです。支払い能力に応じた負担を広げれば、保険料や税金だけに頼る度合いを抑え、制度を支える財源を確保しやすくなる可能性があります。

一方、慎重論が懸念するのは、本人負担が増えた結果、家計に余裕のない高齢者がサービスの利用を減らしたり、必要な介護をあきらめたりすることです。物価が上がるなかで、年金など限られた収入から食費や光熱費を払い、さらに介護費用を負担する人もいます。

負担割合を上げれば制度の支出を抑えられる可能性がありますが、支払いを避けるために介護サービスの利用が減れば、本人の生活や家族の介護負担にしわ寄せが及ぶおそれがあります。
  • 見直しを求める側:現役世代の保険料負担を抑え、支払い能力に応じた分担を進めるべきだとしています。
  • 慎重な対応を求める側:低所得者や支出の多い高齢者が、必要なサービスを利用できなくなる事態を避けるべきだとしています。
  • 共通する課題:制度の財政を守りながら、介護を必要とする人が適切な支援を受けられる仕組みを保つことです。

結論はたびたび先送りに

2割負担の対象を広げる議論は、今回が初めてではありません。日本政府は2022年以降、これまでに4回、結論を出さずに検討を先送りしてきました。選挙への影響や介護業界の反発に加え、物価高やほかの社会保障財源をめぐる議論も、判断を難しくしてきました。

しかし、2026年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」には、介護保険で2割負担となる人の判定基準を見直し、2026年中に結論を得るとの方針が盛り込まれました。これまでの先送りを経て、政府は改めて判断を迫られています。

判断の基準づくりが重要に

対象者をどこまで広げるかだけでなく、所得をどう判定するのか、医療費や住宅費など日々の支出をどう考慮するのかも重要です。同じ収入額でも、住む地域や健康状態、家族構成によって、実際に使えるお金は異なるからです。

制度変更の影響を考える際には、負担が増える人の人数や保険財政への効果だけでなく、介護サービスを利用できなくなる人がいないかを確かめる必要があります。たとえば、訪問介護の回数を減らした結果、家族が仕事を休んで介護を担うことになれば、負担は本人だけでなく家族にも広がります。


財政の持続性と介護の質をどう両立するか

少子高齢化が進む社会では、介護を必要とする人を支える費用を、どの世代がどのように分担するかという問題が避けられません。負担を現役世代に集中させない工夫は必要ですが、利用者負担を増やすだけで課題が解決するわけではありません。

今後の議論では、所得が比較的高い人に負担を求める範囲と、支払いが難しい人を守る仕組みをあわせて検討することが求められます。負担を増やす場合には、介護を控えた人の生活状況を確認し、必要に応じて負担を軽減する制度を整えることも選択肢となります。

日本政府が2026年中に結論を出せるかどうかは、介護保険の財政だけでなく、高齢者が安心して必要な支援を受けられるかにも関わります。制度を持続させるための負担と、介護を受ける権利を損なわないための配慮。その両方をどう確保するかが、今回の議論の核心です。