医療データ保護の取り組みが評価
韓国保健医療情報院は、医療データを安全に守りながら活用するための基盤を整えてきた功績を認められ、個人情報保護に関する首相団体表彰を受けました。表彰は「第6回個人情報保護の日」の記念式典で行われ、同院が10月1日に受賞を発表しました。
この政府表彰は、個人情報保護への社会的な関心を高め、保護水準の向上に貢献した個人や団体に贈られます。医療データには、病歴や診療内容など、本人の健康状態に直結する情報が含まれるため、取り扱いには特に慎重さが求められます。
医療データを役立てるには、まず本人の情報が適切に守られる仕組みを整えることが欠かせません。
医療情報の標準化から電子カルテ認証まで
韓国保健医療情報院は、医療分野の情報化を支える専門機関です。医療情報の形式をそろえる標準化や、医療機関の間で診療情報を共有する仕組みの整備、電子カルテシステムの認証などを担っています。
電子カルテ(患者の診療記録をデジタルで管理する仕組み)の認証は、医療機関で使われるシステムが一定の基準を満たしているか確認するものです。また、同院は国家統合バイオビッグデータの構築にも関わっています。バイオビッグデータとは、健康や生命に関する大量の情報を集め、研究などに活用できるようにするデータ基盤です。
医療情報を共通の形式で扱えるようになれば、医療機関や研究者が情報を活用しやすくなる一方、情報が漏れたり目的外に使われたりするリスクにも目を配らなければなりません。同院は、健康情報を大規模に扱う機関として、個人情報を管理する仕組みを継続的に強化してきました。
政府の評価で2年連続の最高ランク
取り組みの成果の一つとして、個人情報保護委員会が実施する「個人情報保護水準評価」で、同院は2024年と2025年の2年連続で最高ランクの「S等級」を獲得しました。この評価は、組織が個人情報をどのように管理し、保護しているかを確認するものです。
評価が高いことだけで安全が保証されるわけではありませんが、日常の管理体制を点検し、改善を続ける目安になります。とりわけ医療分野では、システムへの不正アクセス対策だけでなく、職員や委託先が情報を適切に扱う手順も重要です。
医療マイデータの利用にも保護措置
同院は、医療マイデータ事業でも個人情報を守る仕組みを整えています。マイデータとは、本人の同意や手続きに基づいて、自分に関する情報を別のサービスなどに移し、本人が活用できるようにする考え方です。
韓国では、個人情報保護法の改正によって「個人情報の移転要求権」が導入されました。これは、本人が事業者などに対し、自分の情報を指定先へ移すよう求められる権利です。同院は「健康情報高速道路」を通じて医療マイデータの中継サービスを提供し、情報が移動する仕組みの内部管理計画も設けています。
- 医療情報を安全に受け渡すための中継システムを運用
- 情報の取り扱いに関する内部管理計画を策定
- 技術面と組織運営面の両方から保護対策を実施
たとえば、患者が複数の医療機関を受診した際、本人の希望に沿って必要な情報を共有できれば、診療や健康管理に役立つ可能性があります。ただし、情報を便利に使えるようにすることと、本人の意思に反して広がらないようにすることは、同時に実現しなければなりません。
情報を「使えること」と「守ること」の両立
データの移転や共有では、誰が、何の目的で、どの範囲の情報にアクセスできるのかを明確にすることが大切です。安全対策が不十分であれば、本人が意図しない相手に情報が渡るおそれがあります。そのため、利便性を高める仕組みと、アクセスを管理する仕組みを一体で運用する必要があります。
AI時代に向けた利用ルールづくり
人工知能(大量のデータから特徴を学び、予測や判断を行う技術)の医療利用が広がるなか、同院は保健医療データを安全に活用するための制度づくりにも参加しています。医療データは研究や医療サービスの改善に役立つ可能性がある一方、扱い方を誤れば、本人のプライバシーを損なうことになりかねません。
同院は、保健医療データの活用指針の改定を支援し、医療機関や研究者などを対象とする説明会も開きました。指針や説明の場を通じて、データを使う際に守るべきルールを関係者に伝え、個人情報を保護しながら利用する環境づくりを進めています。
身近な例でいえば、研究者が多くの診療記録を分析する場合、名前や連絡先をそのまま共有するのではなく、利用目的に応じて情報を加工したり、アクセスできる人を限定したりする対策が考えられます。どの対策が必要かはデータの種類や利用目的によって異なるため、現場が判断しやすいルールと、実際に守られているかを確認する運用の両方が求められます。
新しい技術に合わせて点検を継続
クラウド(インターネット経由でデータやソフトウェアを利用する仕組み)やAIの普及により、データを保管・処理する環境は変化しています。同院はこうした変化に対応するため、セキュリティ体制を点検し、保健医療分野のAI活用戦略やデータ保護の仕組みに関する研究も進めています。
新技術の導入では、便利さや処理速度だけでなく、データがどこに保管され、誰がアクセスできるのかを確かめる必要があります。今後、医療現場でAIの利用が広がれば、データの安全な管理と、適切な利用を確認する手続きの重要性もさらに高まるとみられます。
委託先の管理と組織内の意識向上
個人情報の保護は、情報を直接扱う機関だけで完結するものではありません。システムの運用や業務の一部を委託する場合、委託先での管理が不十分であれば、情報漏えいにつながる可能性があります。
同院は委託先ごとに管理上の等級を設け、リスクに応じて追加教育や現場確認を行っています。契約時だけでなく、業務を委託している間も、情報の取り扱い状況を監督する体制を運用しています。
- 委託先の管理状況に応じた区分を設定
- 必要に応じて追加研修を実施
- 現場での点検を通じて、個人情報の取り扱いを確認
また、組織内で保護意識を根付かせるため、個人情報保護週間や標語の募集、関係機関と連携したキャンペーンも実施しています。制度やシステムを整えるだけでなく、職員一人ひとりが日々の業務で情報の扱いに注意することが、漏えい防止につながります。
表彰を機に、安心して使える環境へ
韓国保健医療情報院の院長、ヨム・ミンソプ氏は、医療データは国民の健康に直結する機微な情報であり、安全に活用するには個人情報の保護が先立たなければならないと述べました。今回の表彰を機に、保護に関する責任と役割をさらに強化し、国民が安心して医療データを活用できる環境を整えていく考えを示しています。
医療データの活用は、診療や研究を支える可能性を持つ一方で、本人が知らないうちに情報が使われたり、漏えいしたりする危険も伴います。賞の受賞を一つの節目としながら、制度の見直し、技術的な対策、委託先への監督、利用者への分かりやすい説明を継続できるかが、今後の信頼を左右することになりそうです。
ヨム院長は、表彰を機に個人情報保護への責任を強め、国民が安心できる医療データ活用の環境をつくる考えを示しました。



















