2週間で約760億ウォンが返金
韓国のスターバックスコリアは、販促企画「タンクデー」をめぐる批判が広がった後、充電式プリペイドカードの返金条件を一時的に緩和しました。その結果、6月1日からの2週間で、顧客に返金された金額は約760億ウォンに上りました。
この金額は、スターバックスコリアの2026年第2四半期の売上高の約10分の1に相当します。プリペイドカードは、あらかじめお金を入れておき、店舗での支払いに使うカードです。返金額の大きさは、騒動を受けてカード残高を払い戻し、ブランドの利用をやめようとした顧客が相当数いたことを示しています。
2週間で返金された約760億ウォンは、多くの人が今回の問題に強い憤りを感じたことを示す数字だ、と国会議員のキム・ヒョンヨン氏は述べました。
「残高の60%を使わないと返金できない」仕組み
騒動前の規約では、カードの最終チャージ額の60%以上を使った場合に限り、残った金額の返金を申請できました。つまり、1万ウォンをチャージした人が残高を返金してもらうには、原則として6,000ウォン以上を使い、残りが4,000ウォン以下になっている必要がありました。
この条件に対し、顧客からは「企業側の問題を受けて利用をやめたい人に、さらに買い物を促すことになる」と批判が出ました。返金を受けるために、もう一杯コーヒーを買うなどして残高を減らさなければならないのは不合理だ、という意見です。スターバックスは問題への対応として、期間を限定して残高の使用割合にかかわらず返金を受け付けました。
プリペイド残高は企業にとって「前受金」
顧客が事前に入金したお金は、会計上、商品やサービスを提供する前に受け取った代金として扱われます。企業にとっては将来の売上につながる一方、顧客が返金を求めれば払い戻しに応じる必要がある資金でもあります。今回の返金額が大きく注目されたのは、騒動が企業の評判だけでなく、実際の資金の動きにも影響したためです。
「タンクシリーズ」の表現が批判の焦点に
騒動の発端は、スターバックスが5月に発売した「タンクシリーズ」のタンブラーをめぐる販促表現でした。キャンペーンでは「5/18」「タンクデー」「机にタクッ」といった言葉が使われましたが、韓国の顧客らから、これらの表現が5・18民主化運動や、民主化運動と関連する歴史的事件を連想させるとして批判が相次ぎました。
5・18民主化運動は、1980年に韓国南西部の光州で起きた民主化を求める運動です。当時の軍による鎮圧や戦車の進入を想起させる言葉を商品販促に用いたことが、運動を軽視しているとの受け止めにつながりました。また、「タンク」という語や他の表現が、拷問による死亡事件である朴鍾哲氏の事件を連想させるとの指摘も出ました。
こうした批判を受け、不買の動きが広がりました。商品の購入を控えるだけでなく、プリペイドカードの残高を払い戻す行動も増え、今回の大規模な返金につながったとみられます。
韓国進出から27年で初の四半期営業赤字
スターバックスコリアを運営するSCKカンパニーは、韓国進出から27年で初めて四半期の営業赤字を計上しました。第2四半期の売上高は7,473億ウォンで、前年同期より6.1%、485億ウォン減少しました。
返金額と売上高の減少は、騒動が消費者の行動に及ぼした影響の大きさを示す数字です。ただし、売上高の落ち込みや赤字のすべてを今回の問題だけで説明できるわけではありません。企業の業績は、来店客数や商品構成、店舗運営費など複数の要因によって変わります。
ブランドへの信頼回復が課題
飲食チェーンにとって、顧客が繰り返し利用するかどうかは業績を左右する重要な要素です。特にプリペイドカードは、顧客が将来もその店を使うことを前提に、先にお金を預ける仕組みです。カード残高の返金が相次いだことは、顧客の利用意向や企業への信頼を測る一つの手がかりになります。
返金ルールを改定へ 残高の90~95%を返す方針
会社側が示した改定案では、最終チャージ額の60%以上を使った場合は、従来どおり残高の返金を受けられます。一方、60%未満しか使っていない場合は、最終チャージ日から1年が経過した後に返金を申請できる仕組みにする方針です。
返金率は残高によって異なります。残高が5万ウォンを超える場合は95%、5万ウォン以下の場合は90%を返金する計画で、年内の規約改定を目指しています。たとえば残高が4万ウォンなら3万6,000ウォン、6万ウォンなら5万7,000ウォンが返金される計算です。
- 60%以上を利用:従来どおり、残高の返金を申請可能
- 60%未満の利用:最終チャージから1年経過後に申請可能
- 残高5万ウォン以下:残高の90%を返金
- 残高5万ウォン超:残高の95%を返金
このように返金までの期間や返金率に条件を設ける背景には、カードを利用せずに現金化する不正を防ぐ狙いがあるとみられます。一方で、顧客が納得できる条件になっているか、手続きが分かりやすいかも、制度を運用するうえで重要です。
問われるのは危機対応と顧客への説明
今回の出来事は、商品名や広告表現が、企業の意図とは別に歴史的な記憶と結び付くことがあると示しました。とりわけ社会的な痛みを伴う出来事に触れる場合、言葉選びや事前確認を慎重に行う必要があります。問題が起きた後には、批判の内容を受け止め、利用者が不利益を感じない形で対応することも求められます。
今後の焦点は、返金規約の改定がいつ完了するかに加え、顧客が新しい条件をどう受け止めるかです。返金手続きの明確さや、騒動の再発を防ぐための社内確認が信頼回復につながるかどうかが、スターバックスコリアに問われています。



















