妻の冗談を胸に、射撃で2冠

韓国の李建赫(イ・ゴンヒョク)が、愛知・名古屋アジア大会の射撃で金メダル2個を獲得した。2026年10月1日、日本の愛知県で行われた男子25メートル速射ピストルで、まず団体戦を制し、続く個人戦でも頂点に立った。

李の妻は、2024年パリ五輪の射撃で銀メダルを獲得し、世界的に注目された金예지(キム・イェジ)。夫婦そろって射撃の国際舞台で活躍することになり、李の優勝には競技の成果だけでなく、家族の物語も重なった。

「金メダルを取れなければ家の暗証番号を変える」と妻に冗談を言われていた李は、勝負の場面で妻と子どものことを思い浮かべたという。

団体戦は12年ぶりの金

団体戦で李は、宋鍾浩(ソン・ジョンホ)、尹瑞英(ユン・ソヨン)とチームを組んだ。3人で力を合わせ、韓国にこの種目で12年ぶりとなる金メダルをもたらした。

射撃の団体戦は、個人の得点だけでなく、選手それぞれが安定して力を発揮できるかが重要になる。1人の好成績だけでは勝ち切れないため、集中力を保ち、チーム全体で得点を積み上げることが求められる。

李は団体戦の金に続いて個人戦にも出場。団体と個人の両方を制し、今大会の射撃で2冠を達成した。

速射ピストルとは

25メートル速射ピストルは、決められた距離から複数の標的を撃つ種目だ。選手には、狙いを定める正確さに加え、限られた時間のなかで素早く撃つ技術も求められる。

一瞬の判断が結果を左右

静かな環境で銃を構え、呼吸や体の動きを整えながら標的を狙う射撃は、わずかなぶれが点数に影響する競技だ。速射ではその精密さにスピードも加わるため、技術と精神力の両方が試される。


個人決勝はシュートオフで決着

個人戦の決勝で李は、中国の蘇連博凡(スー・リエンボーファン)と争った。最後は2回目のシュートオフ(同点などで勝敗が決まらない場合に行う追加の勝負)までもつれ込む接戦となったが、李が相手を退けて金メダルをつかんだ。

勝敗を分ける場面で李は、妻と子どものことを考えていたという。金メダルを取れなければ家の暗証番号を変えるという妻の言葉は、冗談として交わされたものだった。李は「本当に締め出されたら寂しかった」と笑いを交えて振り返り、妻に「愛している」と伝えたい、メダルを子どもの首にかけてあげたいと話した。

李は決勝のシュートオフで家族を思い浮かべた。優勝後には、妻への愛情と、子どもと喜びを分かち合いたい気持ちを語った。

金예지はパリ五輪で銀メダルを獲得し、射撃選手として大きな注目を集めた。今回、夫の李もアジア大会の舞台で2冠を達成し、射撃選手の夫婦としてそれぞれの実績を重ねた。


射撃の金は若い家族にも広がる

韓国の射撃では、団体金メダルを獲得した尹瑞英にも家族にまつわる背景がある。尹は、今大会で韓国に射撃の最初の金メダルをもたらした追加恩(チュ・ガウン)と交際していると伝えられている。また、両親と兄も射撃選手だったという。

尹は、射撃選手の多い家庭で育ったものの、韓国代表としてメダルを獲得したのは自分が初めてだと語った。団体戦の金メダルを家族に報告すると、大きな誇りだと祝福されたという。

競技の結果は選手個人の努力によって生まれる一方、家族や仲間の応援が支えになることもある。李が決勝で家族を思い浮かべたエピソードは、緊張の大きい勝負の裏側にある人間関係を伝えている。


アーチェリーでも韓国勢が金

同じ日、アーチェリーでは金鍾浩(キム・ジョンホ)が、男子コンパウンド個人で金メダルを獲得した。決勝では台湾の選手を149対145で破り、アジア大会の男子コンパウンド個人で優勝した初の韓国選手となった。

コンパウンドは、弓についた滑車の仕組みを使って弦を引く力を補助するタイプの弓を用いる競技だ。金は決勝で15本を射ち、そのうち1本を9点、残る14本をすべて10点に入れた。正確な射撃を続け、相手を上回る得点を積み重ねた。

金は男子団体で4位となった後、頭痛や不眠に悩まされたという。それでも、個人戦が人生最後の機会になるかもしれないと気持ちを立て直し、決勝に臨んだ。韓国のコンパウンド代表は今大会を金1、銀1、銅2で終え、金は後に続くリカーブ代表へと託された。

リカーブ代表へつなぐ

リカーブは、弓を引いたときに弓の先端が射手と反対側へ曲がる、五輪でも採用されている弓の種目だ。金は、コンパウンドで金メダルを獲得できたことを喜び、これから競技に臨むリカーブ代表にエールを送った。


テコンドー品勢は男女そろって連覇

テコンドーの品勢(決められた攻防の動きを演武し、技の正確さや表現を競う種目)では、男子の尹奎成(ユン・ギュソン)と女子の鄭河恩(チョン・ハウン)が、それぞれ個人金メダルを獲得した。

品勢がアジア大会の正式種目になったのは2018年のジャカルタ・パレンバン大会。韓国は男子個人で3大会連続、女子個人で2大会連続の優勝を果たした。

昨年6月に入隊した軍人でもある尹は、部隊の仲間たちの支えに感謝し、戦友に会いたいと話した。鄭は両足のアキレス腱や太ももの裏側の筋肉などにけがを抱えながら、初めてのアジア大会に出場。「折れても立ち上がった」と振り返り、苦しい時期を乗り越えて金メダルにたどり着いた喜びを語った。

家族、仲間、そして積み重ねた練習

この日の韓国勢は、射撃の李建赫、アーチェリーの金鍾浩、テコンドー品勢の尹奎成と鄭河恩が金メダルを獲得した。種目は違っても、個人の技術を磨き、仲間や家族の支えを受けながら大舞台に臨んだ点が共通している。

なかでも李の2冠は、夫婦で射撃競技に取り組む金예지との結びつきをあらためて印象づけた。妻の冗談を笑い話にできるのは、厳しい勝負を終えて金メダルを手にしたからこそだ。李は競技の成果を家族と分かち合い、アジア大会で得た2つの金メダルを新たな節目にした。