SNSを「国民との直接の通路」と位置づけ

李在明大統領は9月30日夜、Xへの投稿で、SNSは自分と国民を直接つなぐ手段だと述べ、今後さらに活用する意向を示しました。SNSを通じて真実を伝え、自身を支えてくれた人々とつながってきたとして、「困難なときや、ゆがめられた攻撃が強いときほど、国民と直接対話し、国民に頼るべきだ」と訴えました。

大統領は、記者会見や討論会、現場訪問に加え、動画の生配信など、さまざまな方法で国民に近づき、共感と対話を深める考えを示しました。今回の発言は、SNSへの投稿だけに限らず、複数の発信手段を組み合わせて政策や国政の課題を説明する姿勢を打ち出したものです。

李在明大統領は、SNSを通じて国民に直接語りかける機会を増やす方針を示した。背景には、誤解や情報のゆがみを自ら説明して防ぎたいという考えがあるとみられる。

投稿が再び増加、政治課題への見解も発信

大統領は、与党大会への介入をめぐる論争や、閣僚人事の候補者をめぐる検証が不十分だったとの批判が続いた時期には、Xへの投稿を減らしていました。しかし、9月29日には8件、30日には9件を投稿するなど、短期間に発信の回数を増やしています。

9月30日夜から10月1日未明にかけては、重大犯罪捜査庁の初代長官候補であるキム・ジヨン氏について、自身の見解を相次いで投稿しました。重大犯罪捜査庁は、重大な犯罪の捜査を担う機関として設置が予定されている組織です。大統領が個別の人事や政策課題について直接発信すれば、政権の考えを迅速に伝えられる一方、発言がそのまま政治的な争点になる可能性もあります。

支持率低下のなかで、説明の主導権を握る狙い

大統領が発信を強める背景には、国政運営への評価が厳しさを増していることがあります。10月1日に公表された全国指標調査では、国政運営への否定的評価が50%、肯定的評価が43%でした。

大統領自身が政策や懸案について説明すれば、政府の意図が伝わらないまま批判や誤解が広がるのを防げる、という期待があります。たとえば、複雑な制度変更について担当者の説明を待つだけでなく、最高責任者が「何を変え、生活にどう影響するのか」を直接語る形です。ただし、短い投稿では背景や条件を十分に示しにくく、説明が簡略化される危険もあります。


支持層との結びつきを強める側面も

大統領は9月27日、「うそや暴言、誹謗中傷には堂々と対応しよう」と投稿し、支持者に参加と行動を呼びかけました。こうした発信には、政権への批判に反論するだけでなく、積極的な支持層の結束を促す意図も含まれている可能性があります。

10月1日には、市民が参加するオンライン資料保存サイトを紹介し、多くの人に参加を呼びかけました。その投稿では、韓国語の「優雅に」という言葉の最初の音を、政治的な左右を示す「右」から「左」に置き換えた、支持者のオンライン・コミュニティーで使われる表現も用いられました。内輪では親しみを込めた言い回しとして受け取られる一方、広い層に向けた大統領の発信として適切かどうかは、受け手によって評価が分かれそうです。

直接発信で期待されること

  • 政府の政策や大統領の考えを、仲介を挟まず迅速に説明できる。
  • 現場訪問や生配信を通じて、国民の反応を身近に感じられる。
  • 誤情報や誤解が広がった際に、政権側がすぐに説明を出せる。
  • 支持者が情報を共有し、政策への参加につなげる機会をつくれる。

専門家が指摘する対立激化と発言のリスク

一方、大統領の「直接対話」をめぐっては、懸念も出ています。慶熙大学のキム・ユンチョル教授は、発言が非常に率直で、相手と対立する姿勢が前面に出る場合には、メッセージの管理が必要だと指摘しました。大統領が最前線で批判に応酬しているように見えると、社会の対立をさらに深め、本人にとっても負担が大きくなる可能性があるとして、「戦略的な忍耐」が必要だとの見方を示しました。

政治評論家のイ・ジョンフン氏は、発言量が増えれば失言の機会も増え、批判や論争の対象も広がりかねないと指摘しました。また、大統領が個別の懸案に直接対応し続ければ、大統領府の幹部や閣僚が発言を控えるようになる恐れもあると述べています。

政治分析機関のユン・テゴン室長は、大統領が孤立感を抱いているように見えるとし、限られた支持層だけに向けたようなメッセージは、政治戦略として賢明ではないとの見方を示しました。SNSは広く公開された場であるため、支持者には結束の呼びかけとして届く言葉が、反対する人々には対立を深める合図として受け止められることもあります。

大統領の発信が増えるほど、説明の速さという利点と、発言が誤解や対立を生む危険の両方が大きくなる。重要なのは投稿の数だけでなく、異なる立場の人にも伝わる説明と、政府内の役割分担を保てるかどうかだ。

「大統領本人の発信」と政府全体の説明責任

大統領が自ら発信することには、国民が政権の責任者の考えを直接知ることができる利点があります。一方で、専門的な政策の細部や制度の運用まで大統領が個別に説明し続けると、担当閣僚や行政機関が本来果たすべき説明の役割が見えにくくなるおそれがあります。

たとえば、ある政策の目的を大統領が示したとしても、対象者や実施時期、予算、例外規定などを具体的に説明するのは、所管する部門の仕事です。大統領の発信と担当機関の説明が食い違えば、政策への信頼が損なわれる可能性もあります。そのため、直接発信を強める場合でも、発言の確認や訂正の仕組み、閣僚との連携が欠かせません。

今後問われるのは、発信の量より質

米国のフランクリン・ルーズベルト大統領がラジオで国民に語りかけた「炉辺談話」は、政治指導者が新しいメディアを使って人々に直接説明した歴史的な例として知られています。現代のSNSや動画配信は、放送を一方向に届けるだけでなく、投稿への反応や共有を通じて、短時間で大きな議論を生みます。そのため、迅速さに加えて、正確さや文脈の説明、異論への対応が重要になります。

李在明大統領の発信強化が、国民の疑問に答える開かれた対話につながるのか、それとも支持層と批判層の溝を広げるのかは、今後の運用に左右されます。政策の背景を丁寧に説明し、誤りがあれば訂正し、担当機関にも十分な説明の場を与えられるかが焦点です。支持率の低下に対する即効性のある対策としてだけでなく、政府全体の説明責任を高める仕組みとして機能するかが問われています。