オーストラリアでは石炭火力発電所が徐々に閉鎖され、太陽光・風力などの再生可能エネルギーが増えるなか、電力網を安定させていた大型回転タービンも減少している。電気をつくらないものの、電圧の維持に貢献する同期調相機(電力網に接続して回転する大型の電気機械)が改めて注目されているのはそのためだ。オーストラリア・エネルギー市場運営者(호주 에너지시장운영자、AEMO)は、再生可能エネルギーと蓄電池の拡大、化石燃料発電所の閉鎖によって系統強度(電力網が安定した電圧を維持する能力)が不足すると予想される、またはすでに不足している地域で、同期調相機をさらに設置する計画だ。

背景と文脈

従来の大型発電機は、電気をつくると同時に回転し、電力網の安定化にも貢献していた。石炭火力発電所が閉鎖されれば、発電量が減るだけでなく、電力網への衝撃を和らげる回転タービンもなくなる。太陽光・風力発電や蓄電池は通常、インバーター(直流を交流に変換する装置)を通じて電力を供給するが、一般的なインバーターは、過去に大型回転発電機が担っていた系統強度の補強機能を自動的に提供するわけではない。

同期調相機は、電力網に接続されて回転する大型の電気機械だ。発電機に似ているが、電気をつくる装置ではない。回転によって電力網への衝撃を吸収し、電圧が不安定になった際に、通常の運転範囲に戻すのを助ける。蓄電池も安定化機能の一部を担うことはできるが、すべての機能を代替するわけではない。

オーストラリアの電力網の電圧基準は2000年から230ボルトで、許容範囲はこれより最大10%高い水準から6%低い水準までだ。電圧は水道管の中の水圧に例えられる。電力需要が急に変化したり、大型発電所が予期せず停止したりすると、電圧が不安定になる可能性があり、その結果、停電や家電製品の損傷が起こり得るというのが、記事で示された懸念だ。

同期調相機は新しい発明ではない。1世紀以上にわたって使用され、かつては電力網の安定化に広く用いられていたが、電力網の技術が進歩するにつれて必要性は低下した。今、電力供給の構造が変化したことで、再び必要性が高まっている。オーストラリアの複数の州では、電力網の信頼性を確保するためにすでに設置されており、追加設置の必要性は石炭火力発電所がどれほど速いペースで閉鎖されるかに左右される。

このニュースが意味すること

再生可能エネルギーの比率を高める取り組みは、発電源を切り替えるだけでは終わらない。石炭火力発電所が担ってきた安定化機能が減る分、それを補う装置も電力網に備える必要がある。同期調相機は、新たに電力を供給する設備ではなく、電圧が揺らいだときに電力網が安定性を保てるよう支援する設備であり、再生可能エネルギーの発電量拡大とは別の課題に対応するものだ。

設置場所と規模が重要なのもこのためだ。研究では同期調相機の有効性が評価されている一方、コストは高い。したがって、必要な場所に適切な規模で設置すべきだというのが、記事で引用された研究の結論だ。AEMOの計画も、再生可能エネルギー・蓄電池の拡大と化石燃料発電所の閉鎖によって、系統強度の不足が予想される、またはすでに生じている地域に焦点を当てている。発電所の閉鎖のペースや地域ごとの不足状況によって、必要な設備や時期が変わり得る点が重要だ。

例えば、ある地域で石炭火力発電所が閉鎖され、再生可能エネルギーと蓄電池が増えるなら、電力供給量を代替することとは別に、電圧を安定させる機能をどう確保するか検討しなければならない。同期調相機の設置はその補完策の一つとなり得るが、根拠として示された内容だけでは、その地域で実際に何台必要なのかは判断できない。

同期調相機は、電気をつくる発電所の代替設備ではない。電力網の電圧安定性を補う装置であり、設置効果を生かすには、場所と規模を適切に決める必要がある。

確認された事実と、まだ分からないこと

確認された事実

  • オーストラリアでは石炭火力発電所が徐々に閉鎖され、太陽光・風力などの再生可能エネルギーが増えている。
  • 石炭火力発電所の閉鎖に伴い、電力網の安定化に貢献していた大型回転タービンも姿を消す。
  • 同期調相機は発電せずに回転し、電圧を安定させ、衝撃を吸収するのに役立つ。
  • AEMOは、系統強度の不足が予想される、またはすでに生じている地域を中心に、同期調相機の追加設置を計画している。
  • 研究は同期調相機の有効性を認める一方、コストが高いため、設置場所と規模を適切に決める必要があると評価した。

まだ分からないこと

  • オーストラリアで設置が計画されている同期調相機の具体的な設置地域と台数は示されていない。
  • 設備の設置費用や、その財源をどう確保するかも確認されていない。
  • 追加設置が必要な規模や時期が、石炭火力発電所の閉鎖ペースによってどう変わるのか、具体的には説明されていない。

読者が確認すべき点

  • オーストラリアの電力網の信頼性に関する今後の計画で、同期調相機の設置地域と台数が具体的に公表されるか確認する必要がある。
  • 同期調相機は高コストとされているため、設置計画が示される際に、費用や資金調達方法も併せて公表されるか注目できる。
  • 地域ごとの電力網計画を見る際は、発電量の代替だけでなく、石炭火力発電所の閉鎖によって減る電圧安定化機能をどの設備が補うのかも確認したい。